臨床試験

レム睡眠行動障害の診断法の臨床試験

筑波大学附属病院脳神経内科はイムソムノグラフM2®️を用いた新たなレム睡眠行動障害の臨床試験を行なっております。

レム睡眠行動障害が疑われる方が対象となります。本試験は筑波大学附属病院の外来診療を通して行いますので、参加には筑波大学附属病院宛の紹介状が必要です。本臨床試験への参加を希望される患者さま、また、患者さまをご紹介される医療機関の方々は本臨床試験の流れ「お問い合わせ・当院に患者さまを紹介くださる医療機関の方々へ」をご覧ください。

レム睡眠行動障害とは

睡眠中の女の子の絵

睡眠中にはレム睡眠とノンレム睡眠という異なる睡眠状態が交互に訪れます。レム睡眠は、閉じた瞼の下で眼球が素早く動いている(Rapid Eye Movement: REM)から名付けられました。夢をみるのは主にレム睡眠の時です。正常な睡眠では、レム睡眠の時は筋肉に力が入らなくなり、夢の中で行動しても実際には体は動きません。しかし、レム睡眠行動障害の方では、筋肉を緩めるスイッチがうまく働かず、夢で行動した通りに実際に体が動いてしまいます。多くは悪夢を伴います。

レム睡眠行動障害では次のような症状がみられます。

途中で起こすと夢の内容を覚えていることが多いのも特徴です。

レム睡眠行動障害と神経疾患

レム睡眠行動障害は高齢者に多い病気で、日本の高齢者のうち1%程度が罹患しています[1]。特にレム睡眠行動障害はパーキンソン病やレビー小体型認知症などのシヌクレイノパチー*1によく合併します[2, 3]。明らかな神経症状のない方にレム睡眠行動障害を発症した場合は、これらの病気の前触れであると考えられており、レム睡眠行動障害の発症から10年以内に50%がパーキンソン病を発症し、最終的には81-90%が何らかの発症します[4]。高負荷の有酸素運動*2により早期のパーキンソン病の進行が抑制されるとの研究があるため[5]、レム睡眠行動障害と診断された方に対して運動療法を行うことで、パーキンソン病の発症を未然に防げる可能性があります。

レム睡眠行動障害の新しい診断の開発

レム睡眠行動障害は患者さま、ご家族に質問表に答えてもらうことでも大まかな診断はできますが、睡眠時無呼吸症候群、てんかん、夜驚症など他の病気でも似た症状を示すことがあります。レム睡眠行動障害の正確な診断はポリソムノグラフィという検査で行います[6]。1泊2日の入院検査で、脳波計、筋電図計、酸素モニタ、心電図モニタなど多数のモニタをつけて行います。ポリソムノグラフィの装着や、測定結果の判読には熟練が必要なため、行うことができる施設は限られています。このため、より簡易な診断方法が必要とされています。

本臨床試験ではインソムノグラフM2®︎という簡単に装着可能な脳波計を用いて、ポリソムノグラフィと同等の精度のレム睡眠行動障害の診断が可能であることを検証します。インソムノグラフM2®︎は睡眠制御に関わる物質「オレキシン」を発見した柳沢正史医師が代表取締役を務める株式会社S’UIMINが販売する睡眠計測用の脳波計です。インソムノグラフM2®︎は従来の脳波計と比べて電極数が少なく、よりコンパクトであるため、簡単に装着でき、患者さまの違和感も少なく済みます。

本臨床試験の流れ

外来予約

筑波大学附属病院は厚生労働省から指定された特定機能病院であるため、本臨床試験の参加には紹介状が必要です。参加を希望される患者様は通院中・お近くの医療機関に「筑波大学附属病院脳神経内科 三橋泉」宛の紹介状の記載を依頼し、外来を予約してください。

外来受診(1回目)

まず筑波大学附属病院に受診いただき、質問票によるレム睡眠行動障害のスクリーニングを行います。質問票による評価でレム睡眠行動障害の可能性が低い、妊娠中、検査の実施が困難など、条件を満たさないと判断された場合は、臨床試験の対象になりませんので、あらかじめご了承ください。その際に認知機能検査や神経診察も同時に行い、パーキンソン病やレビー小体型認知症の可能性を評価します。

入院(1泊2日)

筑波大学附属病院に1泊2日入院いただき、ポリソムノグラフィとイムソムノグラフM2®️で睡眠状態を計測します。

外来受診(2回目)

入院後の検査で得られた結果をお伝えします。診断後に継続的な通院が必要な方については、筑波大学附属病院で継続して治療を行うか、近隣の医療機関に紹介します。

ポリソムノグラフィの解析結果は速やかにお伝えできますが、イムソムノグラフM2®︎を用いた解析結果については、検証中であるため、ご報告に時間がかかることを予めご了承ください。ポリソムノグラフィ単独で十分な睡眠障害の診断が行えるため、イムソムノグラフM2®︎の結果判定が遅れても治療に影響が及ぶことはございません。

お問い合わせ・当院に患者さまを紹介くださる医療機関の方々へ

本臨床試験についてのお問い合わせや、参加希望の患者さまのご紹介は以下にお願いいたします。

筑波大学附属病院脳神経内科
臨床試験担当医師 三橋泉、斉木臣二
029-853-3224
izumi.mihashi[at_mark]gmail.com(三橋)
ssaiki[at_mark]md.tsukuba.ac.jp(斉木)

(at_markは@に置き換えてしてください。)

*1:神経細胞やグリア細胞にα-シヌクレインと呼ばれるタンパクの異常構造や凝集体が蓄積することを特徴とする神経疾患

*2:心拍数が最大の80-85%程度となる運動を週3回30分行う

[1] Sasai-Sakuma, T., et al., Prevalence and clinical characteristics of REM sleep behavior disorder in Japanese elderly people. Sleep, 2020. 43(8).

[2] Baumann-Vogel, H., et al., REM sleep behavior in Parkinson disease: Frequent, particularly with higher age. PLoS One, 2020. 15(12): p. e0243454.

[3] Boeve, B.F., et al., REM sleep behavior disorder and degenerative dementia: an association likely reflecting Lewy body disease. Neurology, 1998. 51(2): p. 363-70.

[4] Howell, M.J. and C.H. Schenck, Rapid Eye Movement Sleep Behavior Disorder and Neurodegenerative Disease. JAMA Neurol, 2015. 72(6): p. 707-12.

[5] Schenkman, M., et al., Effect of High-Intensity Treadmill Exercise on Motor Symptoms in Patients With De Novo Parkinson Disease: A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol, 2018. 75(2): p. 219-226.

[6] Berry RB, Brooks R, Gamaldo C, Harding SM, Lloyd RM, Quan SF, Troester MT, Vaughn BV. AASM Scoring Manual Updates for 2017 (Version 2.4). J Clin Sleep Med. 2017 May 15;13(5):665-666.

筑波大学 神経内科(脳神経内科)

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E-mail;neurol@md.tsukuba.ac.jp
TEL&FAX 029-853-3224