三橋医師の論文が Neurological Sciences 誌に掲載されました

筑波大学脳神経内科研究室の博士学生の三橋医師が、Adult-Onset Autosomal Dominant Demyelinating Leukodystrophy (ADLD) の症例を Neurologica Sciencesで報告しました。
ADLD は非常に稀な緩徐進行性の大脳白質脳症であり、Lamin B1重複やLamin B1上流のエンハンサー領域の欠失により,Lamin B1 蛋白が過剰産生されることが病態機序と考えられています。ADLDは自律神経障害で発症し,ついで錐体路徴候や小脳性運動失調が出現します。広範な白質脳症がみられ、発熱や感染で神経症状が増悪するため、しばしば多発性硬化症と誤診されます。多くの白質脳症が常染色体潜性遺伝形式やX連鎖潜性遺伝形式をとり、幼少期に発症するのと対照的に、ADLDは常染色体顕性遺伝をとり成人期に発症することからこの名がつけられています。既報告において、ADLDの発症は30-60代であり、もっとも若年の例で30歳です。対して、本報告では発端者の発症年齢は25歳であり、発端者の母も27歳と若年で発症していました。他の症例より発症が早い原因として、コピー数増加を伴う領域が広く、Lamin B1遺伝子近隣の他の遺伝子も含まれていることが、表現型に影響した可能性があります。

Mihashi, I., Ishii, K., Hara, N. et al. An early-onset case of adult-onset autosomal dominant leukodystrophy. Neurol Sci (2024).
https://doi.org/10.1007/s10072-024-07667-6

ADLDの頭部MRI

大脳白質,両側中小脳脚,橋,延髄,両側歯状核近傍などに対称性にT2WI高信号変化を認めますが、その内側の側脳室周囲ではその変化が弱くなっています。


ADLDの脊椎MRI

脊髄は萎縮しており、白質に連続性・対称性にT2WI高信号を認めます。

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